「モモ」ミヒャエル・エンデを読んで

時間の倹約に努めながらも、幸せになれない人に読んで欲しい本。良書との出会いにはタイミングが大切だと言うことも改めて感じた。言わずと知れた、名著。だが、心温まった、心が震えたのであえて記事とする。

私は今年就職した。就職するまでは自分個人の力を高めさえすれば、自分さえ良ければ周りのことなどどうでも良かった。強いて言えば、周りは自分を褒めそやし賞賛さえ与えてくれれば、周りの人間などいないも同然だった。だが、その中でも気にかかることはあった。孤独感。間違ったことはしていない筈なのに、何故か楽しくない。

そんな中、同期で何をしても楽しそうな人を見つけた。よく見てみると、人と関わることを何よりも楽しんでいた。何が楽しいのか最初は理解できなかった。しかし、試しに自分も彼の行動に混ざってみた。楽しかった。単純に目新しい商品を購入することや、新しいスポーツに飛び込む楽しさでは味わえない楽しさがそこにはあった。平凡な生活の中の人と人との関わりは、新たな視点とそして何物にも変えがたい充実感を与えてくれた。

そこで本書を読んだ。そこには、時間を倹約し「預金する」人々が怒りっぽく、暗い灰色の顔になって行く姿とモモが勇敢に時間泥棒に立ち向かって行く姿が描かれていた。特に、預金する人々が楽しむことを忘れて行く様は思わず苦笑いをしてしまった。なぜなら、自分の今までの行動が、預金をする人々の行動に似ていたからだ。きっと、灰色の表情もしていたのだろう。ここまでの、寓意を込めて本著を書かれた著者に心からの敬意を示したい。

児童文学にしておくには惜しい、と感じた。そして、今まで子供用の本だからと敬遠していた自分の行動を悔いた。と同時に、このような良書に巡り会えたことに感謝した。


モモ (岩波少年文庫(127))

モモ (岩波少年文庫(127))